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皮膚のしこり

更新日:2022年8月24日

ワンちゃんも、ネコちゃんも病院に来院される理由で比較的多いものに

『皮膚にしこりをみつけた』ということがあります。

お家で一緒にいるときに、撫でていたら見つけられることが多いです。

『小さいから大丈夫』『がんじゃないかなぁ』など考えることもあるかと思います。


今回は、そんな皮膚のしこりにはどんなものがあるか、僕たち獣医師が診たときにどう考え、治療プランを考えているか、共有できると嬉しいなと思います。


皮膚のしこりはざっくり分けて、2つあります。

 炎症か腫瘍(がん)

もちろん、細かいことを言えばその他の場合もあります。


 『昨日から急に眼の上に黒いしこりができたんです!』


マダニでした。病気が何であれ、早く来ていただくこと治ることも早くなるので気になったら悩む前に相談ください!

この件のように、しこりだと思っても別の疾患の可能性もありますが、今回はこの2つに絞って説明します。


炎症は細菌感染や免疫異常に伴い起こる反応で皮膚の腫れが起こります。

この場合、基本的には一時的な症状であり、薬で改善します。しこりができても、最終的にしこりはなくなります。

たまに厄介なものありますが基本的には消失します。



腫瘍、いわゆるがんの場合は薬を飲んでも、塗ってもしこりがなくなることはありません。がんは大きく分けると良性と悪性のもに分けられ、どちらかかによって経過は大きく変わります。


良性腫瘍の特徴は、なくならないけど徐々におおきくなることです。

『数年前からあるけど、少し大きくなったかなぁ』

と感じるようなことが多いです。


よく遭遇するのが皮脂腺腫、毛包上皮腫、基底細胞腫、皮膚組織球腫などがあげられます。さきほどお話ししたように基本的になくならず、徐々に大きくなるのが特徴ですが、例外として皮膚組織球種だけは3か月程度でなくなることが多いです。


良性腫瘍を疑う場合は、命に関わることはないですが、大きくもなりますし、破裂するケースもありますので、小さいうちに切除することが望ましいです。


当院では、しこりの大きさと、できた場所次第では局所麻酔による切除や、レーザーによる切除も可能です。


悪性腫瘍の特徴は、進行が早く急激に大きくなり、無治療の場合命に関わります。

しこりを見つけてから急に大きくなったら要注意です。

悪性腫瘍として、肥満細胞腫、扁平上皮癌、悪性黒色腫、血管外膜細胞腫、リンパ腫などがあげられます。腫瘍によって経過や態度は変わってくるので詳細は次回にしようかと思います。



それではこれらを見分けるためにどうしたらいいか。

基本的に見た目だけで区別はつかない


見た目が特徴的で予測がつく場合もありますが見た目だけで判断することは危険だと思っておくといいと思います。

検査として病院ではまず、細胞診検査というものを行います。

しこりに細い針を刺して細胞を吸引します(FNA検査)。これによって採れた細胞を顕微鏡で見ることによって先ほどお話しした炎症か良性腫瘍か悪性腫瘍か判断していきます。

およそ30分ほどで結果が出る検査で、この結果によって手術を行い取るべきか相談していく流れになります。



ここで重要なのが、いくつかの腫瘍は細胞診検査だけで診断がつきますが、細胞診検査では確定診断をつけることはできないところです。

~癌、~腫、~炎などまで細かいことまで診断をつけることはできず、炎症っぽいなぁ、悪性腫瘍っぽいなぁのようなざっくりしたものだと考えるとわかりやすいかと思います。


細胞診検査の結果、手術をした後は摘出したしこりを病理組織検査に出していきます。これは専門の検査センターに出して、細胞一つ一つではなく組織丸ごと見ることになります。

これによって細胞の顔一つだけで判断するのではなく、周りの組織への広がり具合や血管への入り込み(脈管浸潤)などを評価して確定診断がつけることができます。この腫瘍と正常組織の境界のことを専門用語でマージンといいます。病理検査を行ったことがある患者さんは見返していただくといいかと思いますが、このマージンががんを取り切れているかの評価であり、脈管浸潤は転移の可能性の評価になるため検査結果を読むときのポイントだと思っていただければと思います。



悪性腫瘍の場合、拡大切除も必要になることもあります。

しこりが小さければ、周りの組織への浸潤も狭く、取り切れる可能性も高いため悪性のがんでも根治を見込めます。そのため、早期発見、早期摘出が重要になります


ポイント

  ①皮膚のしこりは大きくわけて、炎症、良性腫瘍、悪性腫瘍に分けて考えると良い

  ②細胞診検査で確定診断は難しく、一部でも採取する病理組織検査が必要。

  ③少しでも腫瘍を疑えば、早期摘出。



皮膚のしこりは良く遭遇する病気の1つであり、お家で撫でたり、シャンプーしたりするときに見つけることが多いです。日頃スキンシップすることで病気の早期治療につながるかと思いますので、少しでも参考になれば幸いです。

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